消滅都市 オリジナルサウンドトラック vol.2
座談会前半

消滅都市 オリジナルサウンドトラック vol.2
座談会前半
Track01 I miss you baby (Music Box Version)

―― 最初は、「I miss you baby」のオルゴールバージョンについてお伺いします。

kawagoe
この曲は、まず最初に、大きな勘違いをするところから始まりまして。

―― 勘違いと言いますと?

kawagoe
オーダーとしては最初から、「I miss you baby」のオルゴールバージョンを、ということだったんですが、“オルゴールバージョン”という先入観から、間違って「Eternity」のオルゴールバージョンを作って提出してしまったんです(笑)

―― そうだったんですか!(笑)

kawagoe
そしたらものすごく丁寧に「この曲ではないのですが……」ってご連絡がきて、大変申し訳ないことをしてしまったなと。
kato
でもその先入観は分かる気がする。だってまさかステージ曲、言ってしまえばバトル曲のオルゴールバージョンが欲しいってオーダーが来るとは思わないよね。
kawagoe
そうなんですよ。ふつうはメインテーマをアレンジすると思うんですが、こういったところでも意表を突かれたと言うか、斬新なデザインになっているんだなと感じました。

―― その後は、すんなりと制作できたのでしょうか。

kawagoe
1度リテイクがありましたね。最初は、前回からの話に繋がるんですけど、「どこまでやったら怒られるかな」ってのが頭にあって(一同笑)、バトル曲だからということで細かい動きの多いアレンジでお出ししたんですが、さすがに「ちょっと音が多いです」とやんわりご指摘が入りました(笑)
kato
使われるシーンとの兼ね合いがあったと思う。しっとりしたシーンで流れたから。

―― 加藤さんはもうゲーム中で確認されたんですね(笑)

kawagoe
あとは、ご好評をいただいている曲のアレンジということで、原曲のイメージやユーザーの皆さまが抱いているイメージは損なわないように、というところは徹底してこだわりました。

―― それはとても感じました。個人的な感想で恐縮ですが、この曲が流れるオルゴールが本当にあったら欲しいくらいです!

kawagoe
ありがとうございます(笑)
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Track02 You and Me

―― それでは次は……

kawagoe
(突然大声で)はい名曲きましたぁぁぁぁぁ!!(一同大笑い)

―― 川越さん!お気持ちは分かりますが落ち着いてください!(笑)

kawagoe
いやもうね、この曲ホント好き!めっちゃ好き!以上!!(一同大笑い)

―― 早いです!(笑) 川越さんには落ち着いていただくとして、加藤さん、改めて4章からのステージ曲、「You and Me」についてお聞かせください。

kato
この曲は、というか、実は『vol.2』に収録されてる4章からの曲は全部そうなんだけど、“ステージ曲”とか“ボスバトル曲”とか、ゲーム中での使用箇所だけオーダーでいただいて、あとはこちらにお任せいただいたんだよね。だから、自分がプレイ中に感じたこととか、抱いたイメージを、そのまま曲にしていった感じだね。
kawagoe
実際に僕らがユーザーとして結構やり込んでるのを見透かされていたと言うか(笑)、「ゲームのイメージや方向性は共有してますよね?」ということで、本当に自由にやらせていただきました。
kato
4章の楽曲の追加オーダーをいただいた頃には、たぶんランク70くらいだったと思うんだけど、やっぱり自分のプレイ経験というのは曲の構成に影響を与えていて、00:44あたりからフィーバーがきたらいいなぁとか考えながら作曲してたよ。

―― もうそのレベルで曲とゲームをシンクロさせて考えていらしたんですね!

kawagoe
すごいです。あとはやっぱり、「I miss you baby」が先にあって、そのあとでよくこんな名曲が出てきたな、と思います。プレッシャーとかなかったんですか?
kato
プレッシャーは多少感じてたけど、それでもあんまり悩まずに作れたかなぁ。「I miss you baby」との差別化は意識して、80年代後半のディスコ調に寄せたり、工夫はしてるけど。

―― なるほど、少し懐かしい音の使い方になってるのは意図的だったんですね。

kato
そうだね。ベースの音をFM音源にしたりとか、“イケイケ”なコード進行にしたりとか、そういう工夫はしてるね。
kawagoe
シンセの音を揺らしたりするのも、最近のエレクトロ・ポップやEDMではなかなか出てこないですよね。本当にあらゆるところにいろんなギミックが使われていて、加藤さんの集大成とも言えるような曲だと思います。

―― 例の“ゴリハモ”も使われていますしね(笑)

kato
あれはもう、完全に味をしめたからね(一同大笑い)
kawagoe
(笑いながら)それだけじゃなくて、次々にいろんな音が出てきて、ちょっと効果音的にも聞こえるところもあって、本当にこの一曲で『消滅都市』を表しているな、という気がします。
kato
ありがとう。

―― あと、この曲はPVやラジオCMなどでも使われましたね。

kawagoe
あれは本当に感動しました!
kato
嬉しかったね。

―― 「I miss you baby」に負けない、素晴らしい曲だからこその抜擢だと思います!

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Track03 Punk

―― 次は通常ステージのボス曲「Punk」です。

kato
これは、「Satellite」と同じ方向性にしつつ、「Satellite」のときよりも強い敵と戦っている感じになるように、って気をつけて作ったね。

―― なるほど。

kawagoe
「I miss you baby」のボイスを入れたのは自主的だったんでしたっけ?
kato
あ、そうか、そこはご指示をもらったね。「ちょっとファンサービス的なネタを入れられませんか」ということで。
kawagoe
これを最初に聞いたときはニヤリとしましたからね!しっかりファンサービスになっていると思います!

―― 少なくとも喜んだファンがここに2人おります!

kato
それはよかった(笑)

―― あとは、個人的な感想ですが、音色の選び方が、ちゃんと効果音を意識して選んだんだろうなぁという気がします。当初は、曲があって、それに合わせた効果音だったわけですけど、4章の追加オーダー曲に関しては、すでにある効果音を意識しつつ、曲を作られたのかな、と。

kato
あぁ、それは確かにそうかもしれない。というか、効果音含めてゲーム中の音は耳に残っているから、無意識のうちにそうなってた感じかな。
kawagoe
改めて、自分がいま遊んでいるゲームの音楽を作る、ってすごいことですよね。
kato
本当にそうだね。
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Track04 Eternity (Strings Version)

―― 次は、「Eternity」のストリングスバージョンです。

kato
(インタビュアーの方を向いて)これは陣ちゃん(※)の話をしないとね。
(※)この座談会のインタビュアーにして、いまこの記事を書いている陣内優希のこと。「消滅都市 オリジナルサウンドトラック vol.1 / vol.2」のディレクションを担当。
kawagoe
(同じくこちらを向いて)間違いないですね。

―― いやいやいや! ……あの、はい、すみません、口うるさくて(一同笑)

kawagoe
座談会用に一から説明しますけど(一同笑)、マスタリングが終わってヘッドホンチェックをしていたうちのサントラディレクターが、ノイズが乗ってます、って言ってきまして。でも、僕とか加藤さんが“ノイズ”って言われて想像する音はどこにも乗ってなかったんですよ。
kato
それで、ノイズ本当にある?って訊いてみたら、ありますよ、って食い下がるから、どこにどんな音が鳴ってるのかよくよく確認してみたら、マスタリング中に乗ったノイズじゃなくて、ストリングスの音源自体に入っている雑音だった、という(笑)

―― その節はお手数をお掛けしまして……!

kawagoe
生音のサンプリング音源だから、当然雑音とか周りの共鳴音とかが入っている可能性はあるんですが、僕なんかはもうその雑音を含めて“音源”として認識しちゃってるから、まず意識しないレベルというか、気にしたことなかったですね。
kato
俺もだなぁ。初めて音源に入っている雑音の除去なんて作業をやったよ。
kawagoe
いやでも、こだわってよかったと思うよ。

―― そう言って許していただけるならありがたいです! ……僕の話はこれくらいにして(一同笑)、この曲で苦労された点などありましたらお伺いしたいのですが。

kawagoe
(しみじみと)この曲のアレンジは本当に苦労しましたねぇ。やっぱりまず原曲が素晴らしいのでそのイメージを崩せない、というプレッシャーと、ピアノ曲をストリングスにするということで、内声の動きを足さなくちゃいけないから、その動きを考えるのが大変でした。
kato
この内声の動きはどうやって作っていったの?
kawagoe
トライアンドエラーですね。1回じゃ絶対に正解には辿りつかないと思っていたので、何度も何度も、全部の動きがきちんと絡み合うように、と考えながら作業しました。ベタに内声を二分音符とか全音符とかにしてしまわないように、という目標を立ててましたね。
kato
いやー、すごいと思う。
kawagoe
あとこだわったポイントとしては、最初の音は絶対に単音にしよう、と決めて作り始めました。これまでのプレイ経験が活かされているというか、ゲームのイメージとして、静かにすっと始まるようにした方が雰囲気を作れるだろうと思っていたので。

―― そこはとても効果的に響いていると思います。原曲が和音で二分音符のところを、敢えて単音で先に入って1拍遅れて内声がついてくる、という動きは、とても自然なんだけど鮮烈に印象に残ります。

kawagoe
ありがとうございます。
kato
川越くんの本領発揮って感じの曲だね。
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Track05 Neverland

―― 続きまして、4章からの重要ステージの曲ですね。

kato
これも、3章までの「Avalon」と同じように、テンポとか雰囲気とかは落ちつけつつ、『消滅都市』というゲームそのものの雰囲気を表現できればなと思いながら作っていったね。
kawagoe
少し80年代後半のテクノに寄せてるのかな、という印象がありました。浮遊感があると言うか。
kato
そうだね。中でポコポコ動いてるシーケンスがコードに関係ない動きをやっていたりするのが昔っぽいかな。あとは、ピアノにがっつりディレイをかけているところとか。
kawagoe
8D(※)ですね、僕も大好きです(笑)
(※)ここでは“付点八分音符ディレイ”の意味で使われている。
kato
ピアノに関しては、最初はここまで前面に出ていなかったんだけど、ご要望があって手直ししたんだよね。そのおかげで、後半に混ぜた「Eternity」の旋律がうまく引っ込んだ感じかな。
kawagoe
いやでもちゃんと気付けるバランスになっていると思います。

―― あと、ぜひお伺いしたかったのは、3章までの重要ステージの曲に「Avalon」、4章の重要ステージの曲に「Neverland」という、どちらも“楽園”をイメージさせるようなタイトルを付けられたのは何故だったんでしょう。

kato
うん、それは、曲は暗いかもしれないけど、希望と言うか、前に向かっている感じがあるタイトルにしたいなと思って。さっきも言ったけど、どちらも『消滅都市』というゲームそのものをイメージしてるから。

―― なるほど、そういう想いが込められていたんですね。困難や新事実なんかに直面する物語の要所要所で、それでも前に進んでいくように、という想いのこもった曲が流れるのは、とても素敵だと思います。

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Track06 Reborn

―― 次は4章の強敵ボス曲、「Reborn」ですね。

kawagoe
でもこの曲、再生とか復活とかって言うより、絶望そのもののような気がするけどね(一同大笑い)

―― ブラックな加藤さんが炸裂してますよね(笑)

kawagoe
「フクザワを使いますか?」って意味で“復活”だったりして(一同笑)
kato
そんなことはないんだけど(笑)

―― (笑いながら)では、制作時の思い出をお聞かせいただければ。

kato
この曲はねぇ、このバージョンになる前の全く別バージョンがあるんだけど、作ってるときに「Wizard」とは全然違う方向にしてみたいなと思っちゃって、川越くんじゃないけど、「こういう路線もアリですかね?」みたいな気持ちで初稿を提出したんだよ(一同大笑い)
kawagoe
加藤さんも攻めてみたんですね!そういう気にさせてくれますよね『消滅都市』は!(笑)
kato
最初に出したのはデジ・ロックで、BPMも圧倒的に速くて、ベースの音色もドラムの音色もこれまでの曲では使ってこなかったようなものにして……みたいな、ホント攻めた感じのものだったんだけど、さすがにリテイクになっちゃった(笑)
kawagoe
それはホントに攻めましたねぇ(笑)
kato
で、そのリテイクのときに、「『Wizard』ではこうこうこういう要素がボスバトルの切迫感とか緊張感とか敵の強大さとかを表現していたと思います」って分析が添えられていたので、それらの要素をきちんと満たした曲を作り直した、という感じ。

―― そこまで詳細に分析していただいたんですね!

kato
でもやっぱり、世界観にマッチするのはこっちだよね。ダークなジュリアナ・テクノの典型みたいな構成だけど、消滅都市の雰囲気には合わせられたと思う。
kawagoe
“ゴリハモ”もありますし、消滅都市らしさはしっかり感じますね。

―― 3章までのボスよりも明らかに強い敵に直面しているんだ、というのも感じられるので、相当ハラハラする曲になっていると思います。

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