楽曲解説

消滅都市 ORIGINAL SOUNDTRACK 2 加藤浩義 楽曲解説 後半

『消滅都市』のメインコンポーザーである加藤浩義が、「消滅都市 ORIGINAL SOUNDTRACK 2」に収録された楽曲について、制作裏話やこだわりのポイント、制作当時の思い出話などを語ります。

後半は、『消滅都市2』へのアップデート後に実装された新曲についてです。

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解説者紹介

加藤 浩義

株式会社ノイジークローク
執行役員 / 作曲家

『消滅都市』や『クラッシュフィーバー』、『DanceDanceRevolution』シリーズ、『龍が如く』シリーズなどで楽曲制作を担当。ダンス、クラブ系やデジタルロックなどアッパーな楽曲を得意とする。

「消滅都市 FUTURE CONCERT supported by Amazon Appstore」をはじめ、 「沖縄ゲームタクト2014」「東京ゲームショウ2015」など、近年ではDJパフォーマンスを披露する機会も増えている。

11Sign

「少女のハミング」というオーダーをいただき、それほど紆余曲折なく出来た曲です。
冒頭、伴奏がまったくなくボーカルメロディだけというのは勇気が必要だったのですが、ずっとやりたかったアプローチでした。
rionosさんのボーカルレコーディングもあっという間に終わりました。

12Closer

『消滅都市2』で「About us」にあたる曲というオーダーで、これも初めのデモからほぼそのままでベースラインが大人しくなった程度の修正で完成しました。
途中のピアノメロディは「About us」に倣って「Sign」から引用しています。
ちなみにサントラ版では2ループ目の後半からベースラインが変化してかなり動いています。

13Ignite

6つくらいまったく別のデモが存在している曲で、その中に「Start New Things」のイントロピアノリフのバージョンがありました。
その後この曲は一旦保留になり、このリフをベースにして「Start New Things」が完成、その後リフを転用し、構成し直して「Ignite」が出来上がりました。
変わった制作過程ですが個人的には一番好きな曲です。

14Start New Things

「Ignite」のデモ版をベースに新たに作り直し、ボーカル曲として構成、今の形になりました。
Emi Evansさんがこういったビートの速い曲を歌うのは大変珍しいと思いますが、自分にとっても凄く新鮮で、素晴らしい楽曲に仕上げてくださいました。
「消滅都市2」のテイストになって初めて露出する曲だったので、PVが出来上がるまでは本当に不安でした。

15Defector

これまでのボス楽曲の雰囲気を「2」の楽器構成(ピアノ、リズム、弦)で表現するのに苦慮しましたが、最初のデモからほとんど変わらず楽器収録をして完成に至りました。
ボイスはSAK.さんに50個くらい色々なワードを喋ってもらいそれを所々に貼り付けたり削ったりしました。

16Serenity

こちらも最初のデモから方向性は変わっていませんが、ややフレーズが多くごちゃごちゃしていたので削ぎ落として今の形になりました。
「Sign」や「Eternity」からメロディを引用したり「Start New Things」から派生させたり、色々なフレーズが埋め込まれています。

17Love Is the Way

EmiさんとSAK.さんがすごく楽しそうにレコーディングや写真撮影をしていたのをよく覚えています。コンサートなどでも本当に楽しそうに歌っていました。「消滅シスターズ(?)」を象徴する曲だと思います。
ここ最近は最初にピアノリフの塊を中心に全体トラックを作ってからボーカルメロディを載せていく、R&Bなどに似た手法で作っています。
この曲もメロディや雰囲気の違うデモバージョンが存在します。

18Frontier

ピアノリフをベースにしながらも当初はもっとシンセが入って華やかな曲でしたが、アコースティックなテイストを全面に出すべく修正をしました。
わかりにくいですがリザルト画面の曲ということで「Fragment」のフレーズが入っています。
これもまったく方向性の違うデモ3バージョンが存在します。

19Sign (Piano Version)

元の「Sign」をピアノバージョンにしたものですが、そのまま置き換えても面白くないのでコード進行をやや変化させて少し切なさを強調しました。
3周年イベントでは谷岡久美さんに演奏をしていただきました。

20Keep Moving On

「Start New Things」から始まってバトル用のBGMがどんどんアップテンポになっていく中、どのようにアッパー感を出すか悩んだ結果、テンポを落として16分音符を多用してみました。
ただ当初のデモではアッパーにすべくメロディに対してリズムが好き勝手なことをやり過ぎていて、SAK.さんが歌いにくかったので、メロディに添うよう調整をしました。
こちらの曲も他の曲同様ゲーム内で鳴るタイミングが本当に素晴らしく自分でも驚きました。
鳴らし方一つで楽曲の魅力を一段上げていただいたように思います。

21Enigma

「弦の刻みを主体とした緊張感、緊迫感のある曲」というオーダーをいただきまして、当初のデモからフレーズが少し足されただけでほとんど変更も無くかなりスムーズに進みました。
が、弦のフレージングが生演奏には大変難しいものになってしまったようで、ヴァイオリンの今野さんにはかなり無理なお願いになってしまいました。
しかし素晴らしい演奏で楽曲に彩りを加えて下さいました。

22Song of Joy

「先へのワクワク感を感じさせる一曲」とのオーダーをいただき、かなり明るめのデモを2パターンほど作ったのですが、「エミさんの紺や黒のドレスが似合うようなシックな、大人っぽい雰囲気」との提示をいただき、ゼロから作り直し今の形となりました。
ポップ感を出しつつ大人感を出すためにコード進行もこれまで使わなかったR&B的なものを取り入れました。
Emiさんもこのビートに慣れてきたようで、ボーカルレコーディングはすごくスムーズに進みました。

23Helix

これまでピアノは1本の楽器構成でしたが、初めて二重奏の楽曲を作りました。
左側と右側でピアノがバトルをしているような構成になっており、是非ライブで聴いて(演奏して)みたい楽曲です。
こちらも当初のデモから少しの変更だけで楽曲完成に至りました。
なお、終盤では「Sign」の後半部分のメロディをヴァイオリンが奏でています。

24You and Me (Once Again)

「感動的な一曲」、『消滅都市2』の楽器構成+「You and Me」というオーダーを頂き、現在の形となりました。
後半の盛り上がる部分、当初は弦楽器を中心としたものだったのですが、「You and Me (Reprise)」の『幸福感』とは一線を画すためにソロヴァイオリンを前に出しました。
「Sign」のボーカル、メロディや井上幹さんのベース、「You and Me」のシンセフレーズをピアノで弾いたところなど細かい部分の聴きどころも是非楽しんでいただきたいです。